ナチュラルワインにまつわる、あれこれを、楽しく掘り下げる連載。第2回目は、北風吹く寒い冬の必需品(!?)、まさかの60℃・熱燗オレンジワインのススメです。
【目次】
1. 言い出しっぺは、またもグラヴネル。
2. 熱燗オレンジワイン、誕生までの経緯は・・・・。
3. ラディコンも、ジョージア軍団も熱燗で開く。最適温は、色に比例。
1. 言い出しっぺは、またも巨匠、グラヴネル。
1本8800円のオレンジワインを“60°C”のがっつり熱燗にする勇気が、私にあるのかと問われれば、 ありません。とんでもないことです。普通は。
ところがしかし。「60°Cで飲め!」と、真顔で、そしてイタリア人らしい、ものすごい目力で力説する人が、あのヨスコ・グラブネル。ラディコンと共に約30年前、イタリア初のオレンジワインを造った巨匠だとしたら・・・・・どうでしょう?
それが実際、3年前私がフリウリ・ヴェネチア・ジュリア州コッリオの、グラヴネルの取材で起こったことです。
もちろんその場で、60℃を体験。がっちりスキンコンタクトして煉瓦色がかったオレンジ色のリボッラ・ジャッラを60°Cと普通の温度(14°前後)と比較すると……、それはまるで、三分咲きの桜と満開の桜ほどの違い。氷の下で眠っているマンモスが、解凍されて勇猛に原野を駆け回っているほどの差、でありました。
もちろん、よくある赤ワインのホットワインみたいにシナモンや蜂蜜での味付けは一切不要。ただワインを温めるだけ。そのことで、柑橘やスパイスのアロマがより高らかに華麗に広がるだけでなく、酸味とタンニンがより丸くなり、綺麗にインテグレート(統合)されていたのです。
まさに香りも味も開くと同時に丸くなる。
それが熱燗オレンジワインの巨大なサプライズでありマジックでした。