バルバレスコは、北イタリアのピエモンテ州にあるバルバレスコ村周辺で造られる高級赤ワインです。
バローロが古くから「ワインの王様」と称賛を得ていた一方で、バルバレスコは一時バローロの弟分的な存在と周知されていました。
しかし、アンジェロ・ガヤを筆頭とした生産者の努力によってワインの品質が向上し、エレガントな味わいや香りを持つ高級ワインとして、今では「ワインの女王様」と称されるほどになっています。
【目次】
では、上の目次に沿ってバルバレスコを説明します。
バルバレスコ(Barbaresco)とはどんなワイン?
バルバレスコとは、イタリア北西部にあるピエモンテ州のバルバレスコ村周辺の地域で造られる高級赤ワインのことで、バローロと並び、最高級イタリアワインの1つと称されています。
バローロのほうがバルバレスコよりも名前が知られていますが、香りや味わいにおいてはバローロに劣っているわけではありません。
一時期ワイン業界では「バルバレスコはバローロの弟分」として苦しんだ時期もありますが、今ではバローロが「ワインの王様」と称されているのに対して、エレガントな味わいや香りからバルバレスコワインは「ワインの女王様」と称されています。
品質の評価も高く、イタリアワインには格付けで4つに分けていますが、バローロ同様に最高位のD.O.C.G.に認定されている銘柄となります(ワインの格付け、D.O.C.G.について詳しくは「イタリアワインの格付けとD.O.C.Gとは」をご参照ください)。
バルバレスコの産地はバローロの産地の隣、バローロから北東の位置にあります。
バルバレスコの産地もバローロの産地もアルプス山脈の麓にあり、夏は日差しが強く乾燥する一方で、冬は厳しい寒さとなり雪の多く振る地域です。
そんな厳しい寒さの中で栽培されるネッビオーロという品種のブドウだけを使ってバルバレスコワインが造られます。
黒ブドウのネッビオーロ種からは造られるこのワインはタンニンが強く、長期熟成型です。
重ためながらも繊細かつエレガントな香りや味わいで、酸味や果実味も楽しめるワインです。
ワインを販売する際に「バルバレスコ」と名乗るためには条件がいくつかあり、例えばネッビオーロ種のみ使用していること、アルコール度数が12.5%以上になること、最低でも熟成期間は26ヶ月にすること……それに加えて1ヘクタール当たりの木の本数にまで決まりがあります。
バローロとの違い
先にご紹介した通り、バローロとバルバレスコは、ワインの王様・ワインの女王様として並び称されています。
いずれのワインもネッビオーロというブドウ品種のみを使って造られており、イタリアワインの中でも最高峰の品質を表すD.O.C.G.に認定されている、長期熟成型の高級赤ワインです。
産地も非常に近く、これだけ似ていることからバルバレスコとバローロは2つを比較して、あるいは並べて語られることが多くあります。
ただし、両者には違いもあります。
法定熟成期間と味わい・香りの違いです。
イタリアのワイン法では、バローロやバルバレスコを造る際の熟成期間についての決まりがあります。
バローロは38ヶ月(そのうち18ヶ月は樽熟成)で、バルバレスコは26ヶ月(そのうち9ヶ月は樽熟成)となっており、バルバレスコのほうが法定熟成期間は短めです。
その影響もあって味わい・香りにも違いが現れます。
赤ワインの醸造工程ではマセラシオンといってブドウ果汁を果皮・種子とともに入れ、アルコール発酵をしながら果皮・種子に含まれるタンニン(渋味成分)をワインに移していきます。
このマセラシオンの工程においてもバルバレスコのほうが短い期間となっており、バローロと比べて渋味や酸味が柔らかく、繊細でエレガントな味わい・香りに仕上がります。
また、タンニンが多く含まれるワインのほうが寿命が長くなり、長期の熟成が必要になることから、バルバレスコのほうが熟成が進みやすく、比較的早いタイミングで飲み頃を迎えます。
ただし、バルバレスコやバローロと一口に言っても、生産者によって畑や醸造方法が異なり、生み出される味わいや香りも変わってきます。
イタリアワインの場合には手に取るワインによって味わいが異なると言えるほど、生産者の色が出ます。
ですから、バルバレスコの中でも、いくつかの生産者のワインを選び、自分の好みを探してみてはいかがでしょうか。
バルバレスコの歴史とアンジェロ・ガヤ
バルバレスコは古くから甘口ワインとして生産していました。
そこから1894年に入り、ミラノ大学出身の農学士であるドミツィオ・カヴァッツァ博士によってカンティーナ・ソチャーレ(生産者協同組合)が設立されると流れは一変します。
高品質のブドウだけを購入できる仕組みを設けた結果、ワインの品質が格段に向上し、「バルバレスコ」という名でワインが流通するようになりました。
バルバレスコは着実に品質を高めていき、1966年にはD.O.C.に、1980年にはイタリアワインの格付け最高位D.O.C.G.にまで昇り詰めています。
こうしてバルバレスコは今やイタリアワインを筆頭するワインの1つとなりましたが、これには「イタリアワインの帝王」とも呼ばれるアンジェロ・ガヤ(Angelo Gaja)の功績が大きいことは知っておくべきでしょう。
1960年代末に家業のワイナリーを継いだガヤは、フランスへの視察旅行で刺激を受け、発酵温度管理や新樽を含む小樽の導入、単一畑名ワインの創設、仏系品種(シャルドネやカベルネ・ソーヴィニョンなど)の栽培開始などを次々と行っていきます。
その革新的な方法は高く評価されており、イタリアの有名なワイン評価誌ガンベロ・ロッソにおいて幾度となく最高評価を取り、イタリア各地の生産者たちにも大きな影響を与えています。
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バルバレスコの3大産地とは?
バルバレスコの3大産地は、ネイヴェ村(Neive)、バルバレスコ村(Barbaresco)、トレイゾ村(Treiso)といわれます。
<バルバレスコの3大産地>
では、バルバレスコの3大産地を順に説明します。
ネイヴェ村(Neive)
ネイヴェ村は北東部にあり、バルバレスコ村の東に位置しています。
ネイヴェ村で造られるバルバレスコは、樽熟成の際にボッティ(ボッテ)と呼ばれる大樽で行われることが多く、長期熟成を経て重厚な味わいとなっていきます。
果実味豊かでタンニンの豊富さが特徴的で、柑橘類やスパイスの利いた味わい・香りになります。
バルバレスコ村(Barbaresco)
バルバレスコ村は北西部に位置し、ネイヴェ村の西側にあります。
この村のバルバレスコは、バリック(小樽)で造られています。
ネイヴェ村と同様に、凝縮した果実味と豊富なタンニンが特徴的なワインです。
バルバレスコの中でも重厚で男性的なワインに仕上がります。
トレイゾ村(Treiso)
トレイゾ村は、バルバレスコ村の南側、ネイヴェ村の南西部に位置しています。
トレイゾ村で造られるバルバレスコは、酸味が強く、ライムストーンやフローラルの香りを持ちます。
ネイヴェ村やバルバレスコ村に比べると、柔らかで女性的な味わいのワインです。
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まとめ
バルバレスコは一時バローロの弟分と苦しんだことがありますが、現在ではバローロと並び称されることが多くなってきました。
イタリアワインの中でも最高峰のD.O.C.G.に認定されているバルバレスコ。
ぜひ一度試してみてください。