サルデーニャワイン ~独自の個性を放つイタリアの島ワイン!サルデーニャワインを徹底解説

サルデーニャの港

個性豊かなイタリアの州のなかでも独自の文化を持つサルデーニャ島。普段なかなか手に取ることはないかもしれませんが、実はリーズナブルに様々なスタイルのワインが手に入る穴場の産地です。海風感じるヴェルメンティーノだけでなく、最近はカンノナウやカリニャーノ種の古木の赤ワインでも評価が高まっています。今回はそんなポテンシャルを秘めたサルデーニャ島のワインを掘り下げていきます。

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【目次】
1. サルデーニャワインの特徴
2. サルデーニャワインがイタリアっぽくないわけは?複雑な歴史背景
3. サルデーニャの気候と主要品種
4. サルデーニャの有名ワイン
 ● ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCG
 ● ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノDOC
 ● カンノナウ・ディ・サルデーニャDOC
 ● カリニャーノ・デル・スルチスDOC
5. サルデーニャワインのおすすめペアリング
6. サルデーニャワインのまとめ


1. サルデーニャワインの特徴

サルデーニャのワインというと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか?島といったら魚介に合うすっきり白ワインだろうと思ったあなた。半分合ってて半分間違っています!夏にはバカンス客が多数訪れる高級リゾート地としても有名ですが、実は山岳丘陵地が多い起伏に富んだ土地。サルデーニャには夏に似合う辛口白ワインから凝縮感たっぷりの赤ワイン、ヴァンジョーヌ・スタイルのワインや甘口ワインなど様々なスタイルが造られているのです。そして特筆すべきは、他のイタリアの州とは異なり、グルナッシュやカリニャンなどスペイン品種も多く植えられていること。ここにはかつてカタルーニャ王国に統治されていた名残りが現れています。

他州にも増して固有品種が大切にされていることもサルデーニャの特徴といえます。イタリアでは1970年代末から「イタリアワイン・ルネッサンス」が始まり国際品種の導入や近代化が進みましたが、隔絶された州であるサルデーニャではその近代化の手が回ることなく、イタリアの土着品種が守られてきました。個性が尊ばれる今、それが強烈な魅力となって輝きを放っているのです。

といっても最近は、独自性を大切にしつつ、世界的なワインのトレンドを取り入れたニューウェーヴの生産者も。例えばこれまでのリッチでパワフルなスタイルと一線を画した透明感のあるレガント系カンノナウ(グルナッシュ)が注目されています。固有品種、古木、株仕立て…今世界が熱視線を送る宝が、ここサルデーニャに眠っているのです。

2. サルデーニャワインがイタリアっぽくないわけは?複雑な歴史背景

まずはその地理的特徴と歴史から紐解いていきましょう。

イタリア地図

地中海でシチリアに次いで二番目に大きい島がサルデーニャ。フランスのコルシカ島のすぐ南にあり、イタリア本土から200㎞も離れた地中海のど真ん中に位置しています。南北270㎞、東西145㎞に広がり、面積は24090キロ平方メートルとイタリア第三の州です。民族衣装が美しいことでも有名で、首都カリアリで毎年5月に開催される聖エフィジオ祭りは多くの観光客でにぎわいます。

そして島というとビーチが思い浮かびますが、実はサルデーニャでは丘陵地と山岳地帯が8割以上を占める起伏に富んだ島。サルデーニャ人は自分達が、羊飼いの農民で山の民族であることを誇りとしています。四方を海に囲まれながら他民族との交流には積極的でなく、その文化はかなり閉鎖的。開放的なシチリアとは対照的に、特に内陸部では独自の分化が発達しています。

事実、サルデーニャの歴史はかなり複雑です。古代ローマによる征服前はカルタゴに、その後ビザンチン人、アラブ人、カタルーニャ人などさまざまな民族の手によって統治されてきました。その複雑な歴史背景は、話される言語にも表れています。イタリア語とは全く異なる言語であるサルデーニャ語を話し、さらに北部のガッルーラやサッサリ地方ではコルシカ語、北西部ではカタローニア語が話されている、まさにモザイクのような言語構成となっています。

なかでもワイン造りに大きな影響を与えたのが現スペイン。14世紀初頭から18世紀初頭までの4世紀の間、スペインのアラゴン家=カタルーニャ王国が支配していた時代にスペインから多くのブドウ品種がもたらされたのです。1720 年にサヴォイア家に割譲されてからはサルデーニャ王国の一部となり、1861年にイタリア王国が統一されましたが、今でもグルナッシュやカリニャン、グラシアーノといったスペインで栽培されている品種がサルデーニャ島にも多く植えられています。

3. サルデーニャの気候と主要品種

サルデーニャの気候は、沿岸部と内陸部でかなり異なります。沿岸部では夏は暑く乾燥し、冬は温暖な地中海性気候。内陸部は昼夜の寒暖差が激しく冬の寒さは厳しい大陸性気候です。年間降水量は海岸部で500㎜、内陸部で500~800㎜と比較的少なく、干ばつが問題になることもありますが、基本的にはブドウ栽培には理想的な環境といえます。

ヴェルメンティーノ

サルデーニャのブドウ品種としては、まず白ワインのヴェルメンティーノを押さえましょう。この品種から造られる「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ」は南イタリアで初めて1996年にDOCGに認定されました。ヴェルメンティーノのルーツもスペインかと思いきや、実際にはイタリア北西部で生まれた可能性の方が高く、祖先はマルヴァジアとの説が有力です。ヴェルメンティーノの白ワインはアカシアやレモン、黄桃のアロマをもち、繊細な柔らかさとフレッシュな酸味、そして後口に感じる塩味やほろ苦さが特徴。もちろん魚介類などとの相性は完璧です。ヴェルメンティーノはサルデーニャのほかにも地中海を囲むように栽培されており、リグーリア州やフランスのコルシカ島では「ピガート」、イタリアのピエモンテ州では「ファヴォリタ」、南フランスのプロヴァンス地方では「ロール」と呼ばれています。

このブドウ品種の呼び方で近年議論を呼び起こしたのが、イタリアが「ヴェルメンティーノ」というブドウ品種名をラベルに使用できないように申請し、2018年にEU法で採択されたこと(オーストラリア、アメリカ、クロアチアは交渉により許可)。ヴェルメンティーノの名前を冠する「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCG」「ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャDOC」の原産地呼称を保護するという名目ですが、「プロセッコ」事件同様、商業的な目的が大きいとの見方もあり、ヴェルメンティーノをラベルに表記できなくなったフランスの生産者は激怒しているようです。

カンノナウ(グルナッシュ)

黒ブドウ品種で最も多く栽培されているのがグルナッシュ。ここでは「カンノナウ」と呼ばれ、カンノナウ・ディ・サルデーニャDOCの原料になります。ちなみにサルデーニャの人たちは、グルナッシュの品種の起源はサルデーニャだと考えており、最近ではイタリアの学者によりサルデーニャ説が支持されるなど、いまだに議論が続いています。

その他の黒ブドウとしてよく栽培されているのが、ボヴァ―ル・グランデ種やボヴァ―ル・サルド種。こちらはDNA鑑定によりそれぞれカリニャン(マスエロ)とグラシアーノであることが判明しました。他には、ジロやモニカといった人の名前のような固有品種も栽培されています。

4. サルデーニャの有名ワイン

ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCG

サルデーニャ島唯一のDOCGで、白ブドウのヴェルメンティーノから造られます。サルデーニャ島のヴェルメンティーノは、品種の特色でもある塩気と苦味が特徴。通常のヴェルメンティーノはカジュアルにがぶがぶ楽しめる日常酒ですが、島の右肩にある北東部ガッルーラ地区は別格。水はけの良い痩せた花崗岩質土壌が広がる丘陵地帯には強い海風が吹きつけ、しっかりとしたアルコールのある深みと凝縮感のある味わいになります。また一部の生産者は、遅摘みしたブドウから濃厚な辛口ヴェルメンティーノも造っています。

ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノDOC

サルデーニャ島で最初にDOCを取得した歴史あるワインで、ワイン名と同じ「ヴェルナッチャ ・ディ・オリスターノ」というブドウ品種から造られます。非常に強烈なキャラクターを放つワインで、スペインのシェリーと同じ、酸膜酵母の働きを利用した個性的なワインです。

造り方としては、発酵した白ワインを樽(栗樽を使うのが伝統的)で熟成させる際に、満量にせずに隙間を空けて熟成させること。すると表面にフロール(産膜酵母)が繁殖し、ワインはその膜に守られながら適度に酸素に触れ、ナッツやスパイスなど独特な風味が生まれるのです。シェリーと異なるのは、酒精強化は行わないこと。ほかに酒精強化を行わずに産膜酵母を利用して造ったワインとしては、ヴァンジョーヌが有名です!

そのほか、ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノほど有名ではありませんが、同じくサルデーニャ島からマルヴァジア・ディ・ボーザDOC膜酵母の働きを使用したヴァンジョーヌ・スタイルのワインです。

カンノナウ・ディ・サルデーニャDOC

サルデーニャの代表品種カンノナウ(グルナッシュ)が主体のワインで、島全土から造られるDOC。赤ワインは果実味豊かでスパイシー、フルボディなスタイルが定番。価格もリーズナブルで、スペインや南仏の濃厚なワインが好きな人にとってはねらい目です。そして見逃せないのが、透明感溢れるピュアなスタイルも造られていること。グルナッシュは今トレンドの品種ですが、スペインのグレドス山脈の古木のグルナッシュワインに類似するような、ニューウェーヴのカンノナウがここサルデーニャでも生産されているのです。その代表的存在であるアントネッラ・コルダのワインは、ピノノワール好きにもおすすめのカンノナウです!

カリニャーノ・デル・スルチスDOC

グルナッシュものほかに、赤ワインで成功したDOCといえば、南部の「カリニャーノ・デル・スルチス」。カリニャンは非常に晩熟な品種で、涼しい産地では熟さなかったり青いタンニンが残ったりする難しい品種ですが、温暖なサルデーニャ島で太陽の熱を浴び、ジューシーでビロードのように滑らかな赤ワインになるのです。

そしてサルデーニャのカリニャーノを有名にしたのが古木の存在。今世界中で古木の希少性が見直されていますが、ここサルデーニャにも古木が現存し、株仕立ての古木のブドウから味わい深いワインが生み出されています。「サッシカイア」「ティニャネロ」「ソライア」の産みの親、イタリアワインのレジェンドの故・ジャコモ・タキスも晩年、サルデーニャのポテンシャルを見出し、晩年の情熱を注ぎ込みました。彼がサンターディ社とともに生み出した樹齢80年超の古木のカリニャーノを使った「テッレ・ブルネ」は、サルデーニャ島のワインの評価を底上げし、今では「プリオラートと並んで、恐らく古木のカリニャーノのワインで成功した産地の一つ」と『世界のワイン図鑑』に記されるほど。

同じくタキス氏がコンサルタントを務めたアルジオラス社の「トゥーリガ」も古木のカンノナウやカリニャーノなどサルデーニャ品種のブレンド。価格は15000円を超えますが、イタリア赤ワインの最高峰の一つといわれるサルデーニャで最も有名なワインです。

5. サルデーニャワインのおすすめペアリング

ボッタルガ

ヴェルメンティーノの白ワインといえば、定番の組み合わせが、島の名物でもあるボッタルガ(からすみ)とのペアリング。地元ではサービスワゴンで塊のボッタルガをスライスして提供したり、パスタにパウダー状のボッタルガをトッピングしたりと日常に楽しまれています。くせの強いからすみはワインと合わせるには難しい食材ですが、ヴェルメンティーノの特徴である塩気と苦味がいい具合にマッチングしてくれます。もちろん、ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノなど産膜酵母系ワインとからすみもいわずもがなの相性です。また、サルデーニャ島の名産品がペコリーノ・チーズ。チーズやからすみとオリスターノをちびちび、なんて通な楽しみ方ですよ!

もう一つサルデーニャの有名料理としては子豚の丸焼き(ポルッチェドゥ)が挙げられます。カンノナウやカリニャーノとの相性は抜群で、大人数でわいわい豪快に食べるのが最高の楽しみ方です!

6. サルデーニャワインのまとめ

独特の塩気や苦味を持つヴェルメンティーノは食事に合わせやすく、さまざまなシーンで活躍してくれる機会も多いはず。またカンノナウやカリニャーノの赤ワインは、万人が選ばないワインなので、ワイン会や通の集まりでも一目置かれること間違いなしです!気になるサルデーニャワインを見つけたら、ぜひ試してみて下さいね。

サルデーニャの港

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